日本・アメリカと比較!数字で知るドイツの労働環境データあれこれ

日本人が、ドイツの働き方と聞いて思いつくのは、「良いワークライフバランス指標」や「効率的な働き方」などポジティブなものが多いのではないでしょうか。他にも、高い収入、ジョブ型の就職システムなども人によってはイメージするかも知れません。

さて、果たして我々がメディアや書籍などの知識を元に思い描くドイツの労働文化は、本当に実情通りなのでしょうか?例えば、いくら収入が高くても、異常に物価が高かったり、所得税が高ければ元も子もありませんね。

将来ドイツで就職を志すのであれば、ドイツという国の経済、労働に関する現実的な数字は抑えておいて損はないでしょう。

年平均所得:56,371$

 アメリカドイツ日本
年平均所得(2020年) 64,475$ 56,371$ 43,819$
2001年(参考) 37,676$ 28,457$ 28,381$

日本の賃金停滞が叫ばれて久しいですが、アメリカには及ばずとも、ドイツでは過去20年間にわたって安定的な賃金の底上げに成功しています。もっとも、日本とドイツとでは所得税の計算方法が異なるので、平均所得だけを元に可処分所得の比較はできない点に注意が必要でしょう。

 アメリカドイツ日本
個人所得税率 10.49% 10.36% 6.02%

※OECDデータを参照。個人純所得およびキャピタルゲインに課せられる税の額を一人当たりで割った数値であり、必ずしも一般的な所得税の値ではないことに注意。

加えて、生活物価指標(Price level indices)も判断基準になります。物価が高くては、いくら所得が多くても意味がありませんね。OECD全体の物価を100としたときのアメリカ、ドイツ、日本のそれぞれの物価指標は以下の通りとなり、意外にも、ドイツでの生活費は日本よりも低い結果となっています。

 アメリカドイツ日本
生活物価指標 115 101 105

EU内の貿易関税がかからないこと、輸送費が安いこと、生活必需品の消費税が安いこと、などがドイツの生活費の安い原因として挙げられます。実際に、ドイツに引っ越して、野菜や果物が安いことに驚いた方も少なくないのではないでしょうか? 

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年間労働時間:1349時間

 アメリカドイツ日本
年間労働時間 1791 hours 1349 hours 1607 hours

年間の労働時間をアメリカ、ドイツ、日本で比較すると、ドイツに軍配があがります。ドイツの労働態度は、時間通りにはじめ、時間通りに仕事を終えることなので、残業や無駄に長い仕事をあまり好みません。

ドイツの経済、産業を見回してみると、自社の技術や優位性を伸ばし、ニッチな専門分野でトップシェアを築くという「Hidden Champoions」の戦略を得意としています。人材育成についても同様、日本のようになんでもできるジェネラリスト型ではなく、限られた得意分野に振り切ったジョブ型の人材を育てる傾向にあります。 

失業率:3.63%

 アメリカドイツ日本
失業率 8.09% 3.63% 2.77%

いくら年収が高くとも、あまりに競争倍率が高く仕事にありつけないようでは意味がありません。日本は世界的に見ても失業率が低く、最も安定した経済体制を保持している国の一つと言えるでしょう。ドイツの失業率指標は日本にはやや劣りますが、失業者に対する職業訓練も充実しており、ヨーロッパの中でもトップクラスの就職率を誇っています。

ただし、ドイツ就職する日本人は滞在許可が就労ビザに紐づいていることなどもあり、滞在年数によってはドイツ国民ほどの優遇措置を得られないこともあります。そのせいもあってか、ドイツの中での外国人の失業率は、ドイツ国民より数パーセント高い傾向にあります。 

過重労働者率:3.9%

 アメリカドイツ日本
過重労働者率 10.8% 3.9% 15.7%

OECDは週に50時間以上仕事に従事する労働者を過重労働者(Employees working very long hours)と定義しており、その全体に占める割合でいうと日本はアメリカとともにOECD加盟国の中で10%を超える高い水準を示しています。他にも、韓国の19%やトルコの25%が顕著に過重労働者の割合が多い国と言えるでしょう。

一方、ドイツや北欧諸国は3%前後と低く安定した過重労働者率を保っています。もっとも、ドイツの中にも残業の多い業種は存在しており、Welt紙の調査では、展示会の管理会社、医療サービス業、公務員辺りは他業種と比較して残業に占める割合が高いという調査結果になっています。

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貧困率:25.6%

 アメリカドイツ日本
貧困率 36.8% 25.6% 36.4%

OECD定義では、貧困率は世帯年収の中央値の半分を下回る世帯の割合を示します。貧困率の悪化は、治安の乱れに繋がることから、経済を安定させるために底上げが期待される指標の一つとなります。 ちなみに、可処分所得を元に所得の不平等率を割り出した賃金不平等率の指標でも、ドイツはアメリカ、日本に比較し低く安定した指標を保っています。

 

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仕事満足度:71%

 アメリカドイツ日本
仕事満足度 78% 71% 42%

オランダのリクルート会社randstad社がドイツ、日本を含む34の国と地域でおこなった横断的な調査結果によると、アメリカやドイツなど西欧諸国が軒並み高い仕事満足度を示しているのに対し、日本が調査国中最下位となる42%の結果となりました。

アメリカやドイツでは、仕事環境に対し比較的オープンに上司や人事部と話し合う傾向にあります。特に、賃金交渉などを従業員側から上職に申し出ることは、日本にあっては中々見られない光景ではないでしょうか?このように、日ごろからストレスのかからないよう「思ったことは周りに伝える」という文化が浸透しているため、あまり見えない不満をかかえ続けることが少ないのかもしれませんね。

年間有給休暇の数:20日

 アメリカドイツ日本
法定最低有給日数 0日 20日 10日
国民の休日数 10日 10~13日 19日

ドイツでは法律によって年間に最低でも年間20日(週5勤務の場合)の有給休暇取得が定められています。これはあくまで法定の最低限の有給日数のため、会社によっては年間30日などの有給規定を設け、従業員のワークライフバランス向上に寄与しています。

ドイツと比較すると有給の少なさが目立つ日本ですが、その分国民の休日の数では負けていません、OECD国中最も多い年間19日となっています。1月2日から仕事を開始する西欧諸国と異なり、お正月やお盆にゆっくりできるのは、日本の会社の長所と言ってよいでしょう。 

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まとめ

さて、今回はOECDのデータを中心に、労働や仕事にまつわるドイツの指標を抜き出してみました。下記の表からも分かる通り、これらデータをひとまとめにすると、ドイツという国が仕事や金銭部分だけでなく、プライベートや効率性というところに力を注いでいることが分かります。

 アメリカドイツ日本
年平均所得 👑64,475$ 56,371$ 43,819$
個人所得税率 10.49% 10.36% 👑6.02%
生活物価指標 115 👑101 105
年間労働時間 1791 hours 👑1349 hours 1607 hours
失業率 8.09% 3.63% 👑2.77%
過重労働者率 10.8% 👑3.9% 15.7%
貧困率 36.8% 👑25.6% 36.4%
仕事満足度 👑78% 71% 42%
法定最低有給日数 0日 👑20日 10日
国民の休日数 10日 10~13日 👑19日

どのような国にも一長一短のところがあり、一概に「最高の労働環境はどこだ」という話をしても、埒があかないことでしょう。どの国で働くことが適しているかは、その個人がどういった部分に価値観を求めるかによって決まります。キャリアと栄達を求めるのであればアメリカ、雇用の安定を求めるのであれば日本、そして仕事とプライベートを両立したキャリアパスを描きたければドイツ、といった具合に住み分けができるのではないでしょうか。

出典一覧 

OECD (gross national income)

OECD (tax on personal income)

OECD (PLI)

OECD (hours worked)

OECD (enemployment)

OECD (poverty gap)

OECD additional leave 

OECD better life index

WELT Mehrarbeit-In-welchen-Jobs-drohen-Ihnen-die-meisten-Ueberstunden

Randstad Workforce-insights