ドイツの給料は高い?日本とドイツを最低賃金から比較

ドイツはEUの盟主とも言われており、EUの中でも経済のエンジンとして非常に大事なポジションを占めています。「ドイツは他のユーロ圏加盟国のおかげでユーロが弱くなっているので、ドイツにとって優位性を発揮している」とは多くの人に囁かれているテーマと言えるでしょう。

このように、ドイツはヨーロッパで一番所得の高い国ではないものの、好調な経済を背景にEUの中でも堅調な給与水準となっています。そこでドイツの最低賃金とGDPに平均年収から見るドイツの給料の給料事情を紹介したいと思います。

※記事中に登場する最低賃金や為替などの情報は2022年9月時点での情報に基づいています。また、記事中に登場する月収などの数値はあくまで一般論であり、実際の給与額などを保証するものではありません。

ドイツの一人当たりGDPは日本より高い?

先ずはドイツの一人当たりのGDPからお話ししたいと思います。国単位でのGDPは人口の多い日本が高いですが、一人当たりのGDPになると逆転します。下の表は、2018年時G7(表の左からドイツ、カナダ、イギリス、フランス、日本、イタリア、アメリカ)の一人当たりの購買力平価を基にしたGDPのグラフになります。

Statistaを元に著者作成

グラフの指し示す通り、ドイツの一人当たり51,600ドルと日本の44,200ドルから約20%近く高くなっています。日本のは立ち位置としては世界最大級の経済大国ですが、一人当たりの数字を見るとトップでは無くドイツのほうが一人当たりのGDPも労働生産性もはっきりと高いということが分かります。

ドイツと日本の最低賃金の違い

さて、こうしたマクロ視点の問題を、我々にとって身近な問題である実際の給料に落とし込んで考えてみたいと思います。初めに、正社員ではなくアルバイトに定められている最低賃金を比較してみましょう。

※ちなみに最低賃金はルールは、適用対象が国によって変わってきます。ヨーロッパでは年齢によって最低賃金の設定が変わりますが、ドイツは18歳以上の賃金になります。

東京労働局が2020年時のG7の最低賃金の比較を資料公開しているので以下に紹介します。

国名最低賃金システム
日本 901円 地域別最低賃金
アメリカ 7.25$ 連邦最低賃金及び州別最低賃金
カナダ 11.15~15カナダドル 州別最低賃金
ドイツ 9.35€ 全国一律最低賃金
イギリス 8.21ポンド 全国一律最低賃金

引用元:東京労働局 最低賃金の国際比較

上の表を見ると日本は901円に対してドイツは9.35ユーロです。為替によって推移しますが、1€が100円を下回ることはほぼないため、基本的にドイツの最低賃金は日本の1.3~1.4倍程度と見なすことができます。

※2022年10月より、日本の全国加重平均での最低賃金は961円となります

※2022年10月より、ドイツは最低賃金が12ユーロに更新されました

平均年収

最低賃金の情報を紹介しましたが、フルタイムで働いている人にとってはどうなるでしょうか?ドイツの大手人材会社Step Stone社の調べによると、ドイツの平均年収では58,000ユーロと紹介されています。 半面日本ですが、2021年9月に国税庁より公表されました「令和2年分 民間給与実態調査統計」によると、最新の平均年収は約430万円になります。日本の平均年収は10年ほどあまり変わっていません。

ここで少し、日本とドイツの給料システムの概要の違いについて触れておきましょう。1点目に所謂1億総中流と言われた昭和と比べて日本人の年収に格差ができており(もちろんドイツにも格差はありますが)、中央値を見ればわかる通り、平均通り貰っている人は減ってきています。また、ドイツは転職が一般的になり持っているスキルを武器に数年ごとで転職をして新しいスキルや年収を上げていくのに対し、日本は年功序列で一つの企業(又は業界)に何年も務めて年々収入を上げていくモデルになります。

もっとも、日本では会社の福利厚生によって住宅手当や交通費手当がついたりと、額面だけでは語れない点もあります。そのため、文字通り「額面通り」の金額でもって日本よりドイツのほうが良い給料を享受できるとは考えない方が良いでしょう。

額面からの控除額

一概に最低賃金や平均年収を見ていくと、ドイツの方が高いので魅力的に映るかもしれません。しかし額面の給料から引かれる税金類に目を向けると、また異なった捉え方ができます。ドイツの税金には所得税から日本人には馴染みの無い教会税、犬を飼っている場合に課税される犬税など、様々な税が額面から引かれます。また、給料を受け取る人の年齢や子供の有無など様々な条件で異なり、独身者ほど不利な税制となっています。 そこで一例として30歳独身で日本(東京)とドイツ(ベルリン)の平均年収モデルと年収を500万円に揃えた場合を基に控除額と手取りを出してみましょう。ちなみに円とユーロの為替は単純化のために1€=130円として計算しています。

Calculate your Gross Net Wage : 月収と年収の手取り計算|給与シミュレーションを元に著者作成

上記の表の示す通り、日本の方が控除額がかなり低く、両国平均年収では大きく差が出ますが、手取り額でみると額面からの差がかなり縮まります。俗に言われる「BruttoとNettoの違い」ですね。年収500万円で揃えた場合は日本の方が手取り約7万円も多くなり、割合いで見るとドイツの方が控除額が2倍も高くなります。 もしドイツに移住した日本人が日本に住んでいた時と同じ額面を貰う場合は手取り額がかなり下がってしまいます。もちろん日本とドイツで物価も違いますし、福祉の点でも差が出るのでドイツに行くと貧乏になるわけではありませんが、控除額が異なるという点を理解しておく必要があります。

また、ドイツで就職して必ずしも日本と比較し給料があがりにくいというのには、ドイツでは年功序列ならぬ「経験序列」方式で賃金が上がっていくため、ドイツでの職歴が無い人間はキャリアがリセットされ、また賃金昇格のステップをゼロからあがっていくはめになることが多い点が挙げられます(参照記事:日本人にとって、なぜドイツ就職は難しい?)。

そのため、ドイツで日本からの職歴を引き継ぎ、期待値通りの額面を給与としてもらうには、日本での職歴を正当に評価してもらえる在独日系企業への就職がおススメされます。