元サラリーマンが日本企業、ドイツ企業双方の仕事文化を徹底比較!

組織というのは、個人の集合体で、やがてそれが大きくなると社会を形成します。どのような大きな組織でも、個人の寄せ集めで成り立っているわけですが、面白いことに、組織全体もまた、個人のように「性格」を帯びるようになります。

それゆえ、ビジネスの世界では、組織論、グローバル組織論、Cross-Cultural Management、のような分野の研究が盛んで、日系企業に関する研究も多くなされています。今回は、我々が慣れ親しんだ日系企業文化を離れ、ドイツの企業組織がどのような性格を持っているのか、日本からドイツに転職した商社マンのTさん(仮名)へのインタビューをもとに、違いについてまとめて行きたいと思います。

ドイツの会社とドイツ人

日本企業が形式美にこだわり、アメリカ企業が利益にこだわるように、企業組織はその国の性格の顕現のようなもので、ある程度の特徴を持っているとTさんは語ります。

ドイツ人、あるいはドイツ企業の特徴として知られているのは、「即物的(Pragmatical)」あるいは「合理的」であることです。変に見てくれにこだわるよりも、かといって利益主義的というわけでもなく、ひたすら合理的に、会社としての存続と発展を考慮する国民性であるとのことです。

例えば、日本の企業で何かトラブルが発生した場合、責任の所存を明らかにし、まずは形式的であっても顧客への謝罪から始まります。ドイツの場合、「まあ、起こってしまったことはしょうがないから、まずは責任のなすりつけあいをするよりも、どうやって次の最善手が打てるのか考えようぜ」と、割りとあっけらかんとしています。

例をあげればきりがないのですが、日本人である私の目から見ると、奇異に映る部分が多くあります(恐らく、むこうからみたらこちらが変に見えているのでしょうが)、とTさんは自身の商社での経験を元に答えてくれました

Tさんがドイツの会社に入った経緯

Tさんがドイツの会社に所属するようになったのは、日本で社会人経験を積んだのち、ドイツの語学学校に入りなおし、そこで募集中だったインターンシップをおこなった縁からでした。学校の掲示板に、ドイツ語+アジア言語話者を募集していたため、申し込んでみたところ、上手く面接に合格し、数か月会社のほうで働くことになったとのことです。

アジアのマーケットをコントロールする業務でしたが、その後、パフォーマンスもボスにそこそこ認められ、そのまま会社で働いてみないか、という形で、晴れて正式に採用されるようになったとのことです。

というわけで、Tさんの場合、いきなり本採用でオフィスワークを開始したわけではなく、試用期間が数か月あってから(ドイツの学生の場合、みな似たようなパターンをとりますが)、という形で、じわじわと業務内容が増えていった形です。

転職サポートサービスに申し込む

日本とドイツ、サラリーマンのここが違う

駐在などでドイツに来たことのあるサラリーマンの方などはいると思いますが、日独両方の会社組織で働いた経験のある方は中々いないと思います。それゆえ、元日本のサラリーマンのTさんの目からみて、どんなところが違うのか、感じた点をまとめてもらいましょう。

残業は極力避ける文化

まず、ドイツの場合重要なのはプロセスではなく結果です、とTさんは語ります。日本のように、会社に夜遅くまで残って残業しても評価されないどころか、むしろ非生産的だと批判されます。

その文化は、会社、あるいは社会全体に広く行き届いており、銀行やコンサル、医者など一部の激務で知られる職種を除けば、ドイツ人の仕事は定時には終わり、夜はスポーツや友人との会食など、プライベートを楽しめます。 これは、日本企業がドイツ人を雇うときも、よく問題のたねになるようで、かきいれ時など、ちょっと人手が足りない、普段よりも多く働いてほしい時などでも、さっさとドイツ人は定時に帰ってしまいます、とのことです。

ちなみにOECDの報告書を見ると、ドイツの一週間の平均労働時間は2021年時点で39.6時間です。対して日本は45.4時間、効率性には随分と開きが生じていますね。

 アメリカドイツ日本
年間労働時間 1791 hours 1349 hours 1607 hours

参考資料:OECD.Stat

公私混同せず

日本のように、会社の同僚や上司との付き合い、といったものが希薄なのもドイツ企業の特徴です。たまに(創立記念日や、クリスマスなど)、会社のイベントが催される程度で、会社での人間関係はあまりプライベートに持ち込まれません。

ただ、これはTさんの年齢が、同僚と離れているためかもしれません。話を聞くと、同僚同士でよく飲みに行く、というドイツ人の友人もありますし、会社によりけりなのでしょうか、とのことです。

裁量決定権が大きい代わりに、責任は自分でとる

日本の場合、割と個人の行える業務内容は限定的で、新卒であればなおさらでしょう。ホウレンソウ文化で良く知られるように、個人のパフォーマンスよりも、横の連携、集団行動が良しとみなされます、とTさんは語ります。

ドイツの場合、みな自由に行動・業務をおこないます。ドイツの社会は個人主義でよく知られ、よそはよそ、うちはうち、を地で行く国家です。それゆえ、割と連携を取らずに、単独で勝手に行動するパターンがよく見受けられます。

その代わり、おこなった業務に関しては、ボスが責任をとるというより(たとえボスに了承を得たとしても)、おこなったその当人の責任、というようなケースが多々発生します。

休暇取得は最重要項目

Tさん曰く、日本人が食を大切にするのと同様、ドイツ人は休暇とその時の旅行をとても大切にしています。有給休暇取得率は当然世界屈指の数値ですし、休暇になればドイツ人はたちまち街から姿を消し、スペインやトルコ、モロッコといった暖かい地域へ1~2週間足を運ぶものです。

つまり、ドイツ人は休暇のために生きているといっても過言ではなく、もしその休暇取得を妨げたりしたものなら、どれほどの怒りをかうのか、想像すらしたくありません。日本の会社では休暇取得は遠慮しがちですが、ドイツでは当たり前のように全消化。もし消化しきれない場合は、自身のタスク管理不行き届きとすら見なされます。

以前、Tさんの友人がドイツの企業で日本向けのカントリー・マネージャーという役職に就いたようです。ただ、仕事量が多すぎて1年間一切休暇を取れない日々が続いたのち、ようやく2週間の休暇を取れる余裕を見つけ、ドイツ人の社長に報告したそうです。その時の社長から彼への言葉が「おめでとう」だったそうです。このお話しは、大事な休暇を取れるか取れないかはお前の管理能力次第だ、ということを意味しています。大事な休暇を取れるように、マネージャーとしてしっかりと仕事を管理しろ、ということです。これを一年間できていなかった彼の社内評価は、パフォーマンスとは裏腹に悪かった可能性すらあるのが恐いところです。

このように、文化面、制度面でドイツと日本の企業文化は大きく異なります。Tさんの場合、日本で仕事をしていたころからグローバルな業務を遂行していたため、本場のドイツ文化に慣れるまでそう時間がかからなかったようですが、中には文化の違いからすぐに会社を去ってしまう日本人も少なくないようです。

その点で、ドイツに拠点を構えている在独日系企業は、日本文化とドイツ文化のちょうど中間のような性格を持ち、日本からドイツに転職する日本人にとって人気の応募先として注目を集めています。

ドイツにおける日系企業のダイナミックな海外業務に興味のある皆さんの応募を、キャリアコネクションズは応援いたします。求職者の皆様へのサービスは完全無料です。

転職サポートサービスに申し込む