ドイツ人とビジネスする上で知っておきたい9つの仕事文化

国によりビジネスの法律、制度は異なります。ヨーロッパでは、明文化されている税法などよりも、むしろ日々の商慣習の方が、ときとして我々日本人には理解するのが難しいことがあるのではないでしょうか。

国際ビジネスの成功の秘訣は、いかにこちらの製品優位を保ちつつ、相手の制度や風土に合わせてローカライズしていくことができるか、と言われています。それは、ドイツに進出する日系企業でも同じことが言えるでしょう。

ヨーロッパの中では比較的きっちりしているイメージのあるドイツ人ですが、ビジネスでは様々な文化的な違いがビジネスの成否に影響を及ぼします。 今回は、日本人がドイツ人とビジネスする上で気を付けなければならないこと9選を紹介していきたいと思います。

ドイツ人は電話が大好き

統計データこそありませんが、ドイツ人は他のヨーロッパ人と比較しても圧倒的に電話が好きな文化であると言えるでしょう。日本人としては、英語やドイツ語に自信がない場合、メールなどでやり取りしてくれ、と思うかも知れませんが、そんなことはお構いなしにドイツ人は電話での対応を好みます。メールで返事をくれない事でも、電話では即答してくれる、というケースが少なくありません(一説によると、メールでは自身に不利になる証拠が残ってしまうので、言ったことの証拠の残りにくい電話を好むのだとか・・)

そのため、何か用があるときは、プライベート、仕事問わず、ドイツではバンバン電話をかけて解決しましょう。就労ビザや健康保険と言った、お役所との折衝事に関しても同様で、メールだとやり取りに多大な時間を要します。

ちなみに、ドイツでもフォローアップメールやフォローアップコールといったウェブマーケティング手法が当たり前のように実施されていて、SaaSなどに登録をすると、すぐに電話がかかってきてクロージングにかかります。それだけ電話というツールが日常にあるということです。

要件は単刀直入に

ドイツ人に電話をかける場合、日本人のビジネスのように、プライベートの話題や、要件に関係ないことを持ち出すことはしません。多少付き合いのある既存顧客でも、端的に、ザクザクと、聞きたいことを聞き、会話は打ち切られます。

ただ、ドイツで仕事をしていると、ドイツ人以外とコミュニケーションすることも少なくないので、その場合臨機応変に対応できると良いでしょう。例えば南欧とか、中東に電話する場合、本題と関係のないことを聞かれることが多いわけです。トルコ人に電話する際は、ドイツは寒いのか、パーティはたくさんあるのか、飯は旨いのか、といったスモールトークばかりで本題に入りずらい、という面白い声も上がっています。

対面の際はスモールトークが大事

とはいえ、毎回毎回本題から入ればよいという訳でもありません。時には、相手のオフィスを訪問することもあります。その場合、いくらドイツ人でも、着いた瞬間に「さあ、本題に入りましょう」とはなりません。ちょっとだけアイスブレイクの時間が設けられます。

ケースバイケースですが、会話の切り口として一般的に通用するのは、相手のオフィスを褒めておくことです。新しければ「なんてモダンな!」、古く汚くても「歴史を感じますね!」とか、「駅から近いですね」とか、なんでもいいのでポジティブなことを言いましょう。褒めるところがなければ、その街自体を褒めても大丈夫です。逆に、向こうから聞かれることとしては、「道のり(オフィスまでの)はどうでしたか?」というような、当たり障りのないことです。

また、他の欧州ビジネス同様、天気の話題も会話の切り口として大丈夫です。その場合に限り、ネガティブなことでも良いと見なされます。

ビジネスでは多少強引さが大事

German assertivenessと揶揄されるように、ドイツ人は「自己主張が激しい国民性」として見なされがちです。そのため、状況によりますが、ドイツ人にものを売る場合などは、日本人の感覚で多少強引にいっても大丈夫です。例えば、こちらから見積もりを出して、相手が「社で検討します」となっても、電話でその後の進捗を確認しましょう。

同様に、社内でも上司や同僚と口論をするドイツ人というのは割と多く見かけることがあるのではないでしょうか。これは、ビジネスだけでなく、ドイツで生きる上での鉄則ですが、押しが弱いと相手の中で忘れられていきます。

メールは無視されることが多い

ドイツ人は合理的ですので、あまり直接的な利益に関係のなさそうなメールなどは無視されがちです。上述の通り、重要な話題に関してはやはり電話を好む習性があると言えるでしょう。

そのため3日以上、メールが放置されていたり、返信が無いようであれば、もう一度メールするか、電話するかして催促する必要があります。こうした「督促」は、ドイツ文化において別に失礼にはあたりません。

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時間は守る

他の時間的な適当さ加減が漂う欧州諸国に比べ、ドイツ人は約束の時間にちゃんとやってくるので、同じく時間厳守の日本人としては共感できる部分が多いと言えるでしょう。最も、日本人のように「10分前」に余裕をもって到着したり、会議を始めるのではなく、文字通り「時間通り」に到着することが望まれます。これは、早く着きすぎてしまうと逆に先方の準備が整っていないため、失礼に当たるとの文化から来ています。

突然長期休暇に入る

ドイツ人、そもそもヨーロッパ人全体の傾向ですが、繁忙期でも2週間規模の長期バカンス(Urlaub)をとります。ドイツ人にとって、休暇は労働の対価であり、かつ労働法で保障されている権利である以上、誰にも侵害される筋合いはないと考えているのです(詳細に関しては「日本とドイツのワークライフバランス比較:祝日数の違いについて」の記事を参照)。

もし自分の担当のドイツ人や、同僚に重要なプロジェクトを担っているドイツ人などがいたら、あらかじめ、彼(彼女)のスケジュールは把握しておき、当人が不在の場合誰とコンタクトをすればよいか、どのような対応を行うべきなのかを予め判断しておきましょう。

建前は不要

一つ、小話を挟みましょう。とあるドイツ人が日本へ出張に行った際、潜在顧客がオフィスに招待してくれて、「ランチを一緒に食べたり会社紹介をしてくれて、とても嬉しかったが、全くビジネスをする気がないことが後日分かり、本当に時間を無駄にしたと思った」と愚痴をこぼしたことがあるようです。

日本人からしたら、ドイツの企業を招待することは「おもてなし」であり、ビジネスの可能性が低いのであれば、相手の時間を大切にしてあげた方が喜ばれるでしょう。「そんなこと言っても、最初からビジネスに繋がるか分からないじゃないか」と思われるかもしれませんが、そういった場合は、お互いに必要な情報を先に交換するなり、大事な話を終えてから、引き続きやり取りする可能性があればディナーに誘うなどしましょう。

バイエルンなまりに要注意

歴史的に、ドイツはもともと数十か国の諸侯に分かれていて、プロイセンがそれを近代化のために統一した形です。ですので、地方によっては独自の文化や考えを持っているようなところも多く、第一次世界大戦末期には、それがもとで、各地で反乱が相次ぎ、バイエルンを基盤とするナチスの台頭を招く結果となりました。

さて、そうした独自色の強い地方の傾向は、言語にも影響してきます。Hochdeutschと呼ばれるドイツ語が、いわゆるスタンダードな(日本でいうところの標準語)ドイツ語なのですが、バイエルン地方などで話されている「バイエルンなまり」などは、ドイツ人同士でも会話の理解に支障をきたすレベルです。

日本人同士でも、ときに相手が何を言っているのかわからないこともあるくらいですし(電話口などでは特に)、我々が理解できなくても、当然といえば当然です。もし、相手の言っていることが分からない場合、諦めて英語での会話に切り替えましょう。一番やってはいけないのが、分かってないのに分かったふりをしてしまうことです。 ドイツ人に、こちらが外国人だからと言って手加減を加えてゆっくりドイツ語を話してくれる、という期待をしてはいけません。

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